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LTUバランスのこと

あまねけ!」が ama.ne.jp というドメインで世界に公開されてから、今年で9周年になります。

振り返ってみると、あまねけ!の前身は、 ktgr.xyzforestgirls.com でした。最初は小さなVPSで手書きのHTMLを配信していましたが、引っ越しを機に自宅サーバでTornadoベースのブログシステムを立ち上げたり、HSTS preload listに ama.ne.jp を登録したりしたものです。現在では、Pelicanベースの静的サイトジェネレータシステムをもとに、複数のホスティングサービスから配信できるよう整備しています。

あまねけ!は、かたぎりあまねが個人で継続的に管理・更新しているWebサイトです。自分でカスタマイズしたHTMLテンプレートを元に、自分で作成したコンテンツを公開しています。個人が管理・更新しているという点で、あまねけ!は 個人サイト に分類されうるでしょう。

しかし、個人サイトを個人サイトたらしめているのは、「個人が管理している」という点だけではありません。あなたはどんなサイトを見たときに「これは個人サイトであることだなぁ」と思いますか? みなさんが同僚と個人サイトについて語り合うときは、具体的なページの姿と共にイメージが浮かんでいるはずです。

私が個人サイトとしてのあまねけ!で実現したいことは、おおまかに分類すると以下の3つにまとめられます。

  1. 「かたぎりあまね」という人物のアウトプットを集約する独占的な場所になること
  2. 「わたし」が書いてもよいが、「わたし」から離れても価値がある情報を配信すること
  3. 「わたし」が書くことに意味があり、役に立つことを意図しない記録を配信すること

これらを一言でまとめると「『わたし』が限りなく尊重されている、外向きの自己と内向きの自己を自由に表現できる場」とでも表現できるでしょうか。つまり「わたし」とそれを見つめる「読者」だけがいて、SNSに蔓延る性格の悪い根無し草は近寄らない。そういう場所です。こう書くと、とても個人サイトっぽくないですか?

実は最近、このあまねけ!3条項について考えを深める機会がありました。きっかけは、最強の個人個人サイトサイト(個人サイトの情報をまとめている、最強の個人サイト)を名乗っているNodenariumという個人サイトのリンク集です。「『個人』をN回繰り返してから『サイト』をN回繰り返す」という一般化は正規言語で書けないので、正規言語で書けないのはなんか強そうな感じがしますね。それに個人サイトは 善い もので、 善い ものを集めるとやっぱり最強になりそうです。

さて、こちらのサイトはリンク集への掲載申請の窓口を設けていて、申請におけるガイドラインを公開しています。

WebサイトがNodenariumに掲載されるためには、以下の審査基準を満たす必要があります。*のついた項目は橘いおねの個人的な裁量によって判断されます。コンテンツが十分に良質であればこれらの基準には厳密に一致する必要はないので、基準に一致しているか不安な場合でも恐れずに申請を送信してみてください。

  1. 個人、または同人サークルなどの特定少数人が運営するWebサイトであること。
  2. noteやtumblrなどの既存のプラットフォーム上にないこと。
  3. 2015年以降に誕生または全面改訂が行われたWebサイトであること。
  4. 外部への情報発信を目的としない私的な内容の投稿(日記やスナップなど)*を3つ以上含み、最終更新が掲載申請の直近1年以内であること。
  5. コンテンツが十分に良質*であること。大量のアフィリエイト記事を含むなど、Nodenariumを宣伝の場に使おうとしていると判断した場合は申請を却下します。

Nodenarium 審査基準

審査基準の内容は形式的でありながら、第4条の「私的な内容の投稿を3つ以上含むべき」という部分は、このリンク集の管理人のいう「個人サイト」の定義を示唆する重要な点といえるでしょう。

この基準に照らしてあまねけ!の現状を確認したところ、ひょっとしたら最近個人サイトとしてのあり方がブレてきているかも?と感じたわけです。

  1. :o: 「かたぎりあまね」が運営するWebサイトです
  2. :o: ama.ne.jp は既存のどのプラットフォーム上にもありません
  3. :o: あまねけ!は2015年に誕生したWebサイトです
  4. :question: 月1回以上の更新を目指していますが、 私的な内容の投稿は少ないかもしれません
  5. :o: コンテンツは少なくとも独創性があり、作者に結びついた創作性を持っています

特に気になったのが、私的な内容の投稿の少なさです。あまねけ!3条項でいうと、第3条の「内向きの自己」にあたります。最近の記事は、完成品の百合小説とZennに同時投稿する技術解説ばかりになってきている気がします。綺麗な作品を並べるだけではなく、もっと「わたし」の内面を出すべきか……と、印象や定性的な評価に終始しても仕方ないので、公開から現在までどのような記事の傾向があるのかまとめることにしました。

あまねけ!の記事傾向を分析するために、私が LTUバランス と名付けた指標を導入します。これは、コンテンツを内容やカテゴリに基づいて以下の「L」「T」「U」に分類して1、必要なら文字数などで重みを付けて2集計した上で、それぞれの割合を算出するものです。

  • L: 外向きの「わたし」を形作る最も大きな趣味に関するコンテンツを振り分けます。あまねけ!では、lilystewのような小説や台本風テキストなどの成果物です。
  • T: 外向きの「わたし」を形作る2番目に大きな趣味に関するコンテンツを振り分けます。あまねけ!では、techのようなあまり一般的でない技術的解説などの成果物です。
  • U: LにもTに属さないコンテンツを振り分けます。Uにはしばしば読解しにくい、あるいは完成度が低い、礼儀を欠いていたり根拠に乏しい主張が含まれます。あまねけ!では、ugokishuzaiのような思索や私生活の記録、思想の表明、文章の断片などが当てはまります。

この指標のうち「L」と「T」は個人サイトの 広さ に繋がります。このサイトに「何が」書かれているかを示す平面的な姿です。外向きの役に立つコンテンツは多くの人や検索エンジンの注目を集め、サイトへの流入を増やす効果を持ちます。一方、「U」は個人サイトの 深さ に繋がるもので、「誰が」このサイトを書いているのかを明らかにするものです。一見すると私的で、ナンセンスで、無意味な記述でも、その塊は個人サイトに人間的な奥行きを与えます。

LTUバランスでは、広いけれども浅いサイトや、逆に狭くて深いだけのサイトには、個人サイトとしての魅力が宿らないと考えます。外向きの自己と内向きの自己をバランスよく含むには、LとTの合計がUと等しくなるべきです。LとTのバランスについてはある程度差があると思いますが、ここでは L:T:U=1:1:2 と仮定します。

指標はある程度一般化しているので、もしかしたらそのまま他の個人サイトにも適用できるかもしれませんし、目指す方向性やコンテンツの性質に合わせて調整する必要があるかもしれません。趣味の数に応じてLUバランスになったり、LSTUバランスになったりするでしょう。

ちなみに、LTUというのはlilytechugokiの頭文字を語呂がよくなるように並べただけで、あまり意味はないです。LU、LTU、LSTU、LRSTU、……と拡張できるように見えるのがいいところです。

では、実際にあまねけ!のLTUバランスを確認してみましょう! 今回は、カテゴリベースで1記事1ポイントの簡易的なLTUを採用します。これでも割と指標としては有効で、わざわざ手間をかけて細かくカテゴリ配分や重みを指定してもあまり意味はなさそうです。

年ごとのLTUバランスを棒グラフで比較

2016年、2023年、全体のLTUバランスをレーダーチャートで比較

やっぱりここ一年ほどの体感は間違っておらず、2023年のUが低かったことが分かります。2023年のugokiには分籍旅行のことという個人的な名作もありますが、記事数がよく伸びているのはTで、確かにこれも違和感がありません。2022年に異様にUが多いのは文学フリマの振り返りがシリーズ記事になっているからでしょう。「シリーズ記事は各記事に1ポイントを按分する」というルールなどを追加すべきかもしれません。

開設当初~2019年にかけてはLがぐんぐん伸びてきており、あまねけ!を作った当初からL(=創作)を頑張ろうとしていたことが分かります。2020年はコロナ禍と就職の年で、生活習慣やライフステージの変化からT(=技術)が伸びていった……と、分析することもできるでしょう。

ついでに、理想のバランスからどれほど離れているかについても可視化してみましょう。百分率ベースの割合について、LとTの平均値を25、Uの平均値を50と仮定した標準偏差の変形のようなものです。

$$s_{\mathrm{LTU}}=\sqrt{\frac{(L-25)^2+(T-25)^2+(U-50)^2}{3}}$$

年ごとのLTUバランスのばらつきを折れ線グラフで比較

あまねけ!開設の当初から2019年まで、Tを犠牲にLを伸ばしてきた点がばらつきとして現れていますね。2020年以降も、LTUバランスで見ると不安定な期間が続いているのが分かります。2021年は記事傾向の変化の過渡期であり、偶然バランスがよかっただけかもしれません。

さて、2024年のあまねけ!はどこに進むといいのでしょうか? LTUバランスを見れば分かるとおり、 個人サイトらしさ を保つためには、もっと「わたし」の内面や私生活を綴るとよさそうですね。つまるところ、人生にクネクネする時間が足りないのかもしれません。

今はもう終わってしまったあまねけ!ニュースレターではそういう記事がいくつかあって、確かに今のあまねけ!にはない書き心地を感じていたタイミングがありました。

LTUバランスは人生のバランスの現れです。長年追っているインターネット人(びと)の個人サイトを見ていると、楽しげでクリエイティブな投稿が続く時期と、投稿頻度が下がって鬱々とした思索が綴られる時期がくっきり分かれていることがあります。個人サイトに人生の大きな動きが刻まれていくと考えると、SNSやナレッジコミュニティが充実した現代で、わざわざ手間をかけて自分だけの個人サイトを作る意味を忘れずにいられるのかもしれません。

みなさんの個人サイトのLTUも、ぜひ教えてくださいね。


  1. 必ずしも1つに決めなくてもよいですが、3つ全てに分けるべきではありません。 

  2. 例えば、5000字ごとに追加で1ポイントを与えるなど。 

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