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私ではない場所に行く

まえがき

工場見学や社会科見学というのは、自分が行ったことのない場所に飛び込み、自分の知らない世界について知識や経験を積み重ねるための営みである。

よくある イメージをそのまま受け入れるなら、山奥にある工場に貸し切りバスで運び込まれた小学生が、醤油やらこんにゃくができあがる様子を生活科ボードにクーピーでスケッチするような風景が浮かぶだろう。前日までに1人最低2個の質問を考えておくように言われたが、まともに――指を全部広げて、という意味だ――挙手していたのは私を含めて数人だった。新卒の採用面接でも同じような時間があったけれど、こういう毒にも薬にもならない質問を考える訓練から逃げ続けていたら、何もかも上手くいかなかったかもしれない。

ただしこれはかなり昔の話であって、現代ならそういう造花を交わすようなコミュニケーションはAIに頼ればよい。今の小学生だって、支給されたタブレットからいくつでも質問を取り出せるはずだ。例えば、こんな風に:

はい、工場見学後の小学生らしい質問を考えてみました:

  1. 「このでっかい機械、スクラップにしたらいくらで売れますか?」
  2. 「もしゾンビが襲ってきたら、この工場は守りやすいですか?」
  3. 「工場の人って、お風呂入るとき体から変な色出たりしません?」

みなさんが保育園児だった頃、昼食後に1~2時間ほど暗い部屋で過ごす「おひるねタイム」はあっただろうか? 私は昔から薄暗い部屋でこそこそ遊び続けるタイプだったので、保母さん(当時はまだそう呼ばれていたはずだ)に見つかるたびにしっかり寝なさいと怒られたものだが、これと給食の完食指導は未だに意義が分からない。まん丸なロールパンとぐずぐずに煮たうどん汁が同時に供される日がとても苦手だった。音楽の教科書に上から校歌の更紙コピーを貼るよう指示されたのも、そうだ。

さて、年長(きりん組と呼ばれていた)だった頃、ある日唐突にきりん組だけが「おひるねタイム」をスキップして園の外に連れ出されたことがある。行き先は近所にあった謎の食肉工場――大動物でも小動物でもない謎の食肉の――で、これが私の人生で初めての工場見学だった。そこで何をどういう順番で見学したかはもう忘れてしまったが、足下がよく冷えた薄暗くて湿った場所を列をなして歩いたのがよく印象に残っている。あれが何の肉だったかは覚えていないのに、今でもなぜか親しみや懐かしさを孕んだ優しい気持ちを思い出す。それからしばらくの間「おひるねタイム」と、この一度きりの おひるね の薄暗い時間が重なって見えて、余計に眠れなくなった。

小学生の頃にも、いくつか社会科見学に連れていかれたことがあった。消防署、魚市場、孵化場……その中でもよく印象に残っているのは、謎の冷凍工場――やはり食肉でも農産物でもない謎の生物の――である。5階建ての大きくてつるりとした外観の倉庫は、各フロアがそれぞれ大きな冷凍室になっていて、小学生であれば10~15クラス程度なら余裕で収納できるだろう。私たちは細いビニールカーテンをくぐって広い冷凍室へと一列に導かれ、その中で凍てつく生物の姿を横目に生きていることを実感したものだった。冷凍室を這い出るや否や結局コンテナに詰められ、ラップでぐるぐる巻きにされてしまったのは、私たちがいつでも おつとめ品 になるのだと意識させるためだったかもしれない。

もちろん、このように新たな世界に飛び込んで新鮮な経験を積むことができるのは保育園児や小学生に限らない。中高生や大学生を過ぎて、大人になってもなお――食肉工場や冷凍倉庫、あるいは造幣局や製鉄所にはまだ私たちが持っていない知識や経験が眠っていて、自分にも あったかもしれない 世界の幅を広げることができる。ひょっとすると、読者の中には30代を過ぎてレールに乗った狭い世界から動けない方もいるかもしれないが、合理化の末に「人生に飽きてしまった」なんて自分を諦める前に、適当な工場見学に飛び込んでみてはどうだろう。

ただ、 大人の 社会科見学というと、こうした新鮮な世界に対する純粋な興味からは少し離れた活動になりうる点には注意が必要である。わざわざ小難しくて渋いテーマ選定になっていたり、アルコール飲料の試飲を前提とした蒸留所や酒蔵の見学が定番だったりとか、あるいは関連製品を安く買える経済的なメリットを提供する場になっていることが多い。また、小中学生――小学5年生のみと名指ししている工場さえある――しか受け入れていないとか、数ヶ月前に団体で申し込む必要があるとか、大人ひとりではどうしようもない壁があるので、今から 全て を知るにはかなりの工夫が必要である。

工場の側だって慈善事業ではないのだから、教育効果の高い小中学生に絞ったり、大きめの団体を効率よく捌いた方がいいし、見学後の工場直売で利益を得られるならそのほうがよい。私たちの側もある種の純粋さに固執せず、それを上手く利用していく必要がある。今回は、こうした経済活動の場を主としつつ、普段は見られない施設の一般開放を兼ねたイベントに足を運んだ体験記として、いくつか資料や写真をまとめようと思う。

私ではない場所に行く

東京拘置所矯正展

東京拘置所矯正展のお知らせ(表面)

東京拘置所矯正展のお知らせ(会場図)

東京拘置所は全国に8箇所ある拘置所のうち最大のもので、東京都葛飾区小菅に所在している。東武伊勢崎線小菅駅の高架ホーム(あるいはJR常磐線の北千住駅-綾瀬駅間の車窓)から、2つのV字型の収容棟が端点で繋がったX字の大きな銀色の建物を見たことはないだろうか? 電車を降りて近くで眺めたくなるオシャレでスタイリッシュな外見だが、これはデザイナーズマンションやコンセプトホテル、あるいは高齢者向け高級住宅ではなく、現在も約3000人の被告人・被疑者・死刑囚などを収容している東京拘置所そのものである。旧奈良監獄のように一般客が宿泊できるようになるまでには、まだ100年以上はかかるだろう。

小菅駅から見た東京拘置所の遠景

小菅駅に掲示されていた東京拘置所の案内

東京拘置所に向かう途中に見かけた案内

小菅の郵便番号は124-0001だが、東京拘置所には個別の郵便番号である124-8565が振られている。124は葛飾区の郵便区番号で、XXX-85XX~XXX-87XXは大口配達先の町域番号を示すので、葛飾区内の大口配達先として専用の郵便番号を振られているということだ。なお、東京拘置所内の収容者に郵便物を出す場合は、拘置所自体の住所である「東京都葛飾区小菅1-35-1」の後ろに「A」と記載する必要がある。拘置所の管理者宛の手紙か、収容者宛の手紙かを区別するためのものらしい。

2024年10月5日に開催された東京拘置所矯正展は、東京拘置所の敷地内で刑務作業品や飲食物の販売、その他省庁の広報などを行うイベントである。途中から大粒の冷たい雨が降って、細い通路では傘がぶつかり合う。去年も雨だったらしいし、きっと毎年こういう曇り空が続いているのだろう。普段は入れない拘置所の敷地を踏破できるのはもちろん、駅や車窓から遠目に見るしかなかった収容棟を怪しまれることなく観察できるというわけだ。もしかしたら、拘置所の内部も見せてもらえるんだろうか……というのは、結果としては期待しすぎだった。

敷地内から見た東京拘置所の様子(遠)

渋い輝きを放つ東京拘置所の表札

敷地内から見た東京拘置所の様子(近)

問題は、東京拘置所を展示する「東京拘置所展」ではなく、あくまで東京拘置所を会場にした「矯正展」だということだ。かつて20XX年には独居房を一般向けに貸し出していたこともあったようだが、矯正展はあくまで再発防止や社会貢献の取り組みを外部にアピールするのが主目的なので、知らない場所に対する知的好奇心を満たすような企画は少ない。東京拘置所の中でもきちんと見学できるのは、せいぜい資料室に改造した旧庁舎のワンフロアくらいである。

東京拘置所旧庁舎の様子1

東京拘置所旧庁舎の様子2

実際のところ、煩わしい手続きなく東京拘置所の敷地に入ること自体や、収容棟を近くで撮影できるのを楽しみに訪れた人は少ない印象で、多くの人は神奈川の刑務所で作られたという品質のよい石けんを買い求めるために長蛇の列を作っていた。刑務所で実際に食べている食品に「プリズン」の名を冠した「プリズンカレー」や「プリズンコッペパン」も人気を集めていたようだが、矯正展中は結局特に何も食べなかった。

東京拘置所矯正展で入手したノベルティ: ボールペンとえんぴつ

2Bのえんぴつに「『世界一安全な日本』を目指して :bangbang: 」という大きな目標が印刷されている。濃い文字を書き続けていくうちに、いずれこの目標も削られ消えてしまうのかと思うとなんだか恐ろしい。

東京拘置所矯正展で入手したノベルティ: 覚醒剤撲滅を訴えるポケットティッシュ

「覚せい剤撲滅宣言区」と題した明るいグリーンのポケットティッシュ。注射器から勢いよく飛び出た液体の中から襲いかかるのは、おそらく薬物の有害性を詰め込んだ「クスリの悪魔」とでもいうべきものだろうが、シンプルな線で描かれた姿はなかなか愛嬌があってかわいらしい。

東京拘置所矯正展で入手したノベルティ: 不審情報の提供を呼びかけるチラシ

なんだか気軽な心理テストやストレスチェックテストのように読めてちょっと面白かった。みなさんはいくつ当てはまっただろうか?

  • :white_check_mark: テロ・ゲリラを賞賛する行動がある
  • :white_check_mark: 重要施設への危害を示唆する言動がある
  • :white_check_mark: ウェブサイト・SNSで過激な書き込みをしている
  • :white_check_mark: 爆発物、銃器に異常な関心を示している

東京拘置所矯正展で入手したノベルティ: オウム真理教について説明するポケットティッシュ

東京拘置所矯正展で入手した配布物: オウム真理教について説明するチラシ

オウム真理教が30年前に起こした数々の凶悪事件を風化させない、後継団体の活動も見逃さないということを呼びかけるポケットティッシュとチラシ。印刷の質が悪いのは予算や機器の都合だろうか。これ自体は仕方ないことだが、受け取った時点ですっかり色あせて見えるのは、まさにこの事件が風化しかけていることを暗示しているようで悲しい。オレンジ色のベタ塗りをやめるか、新鮮なインクで印刷し直すべきだと思う。

東京拘置所矯正展で入手したノベルティ: 表紙と各ページに「教誨」と記されたメモ帳

全国教誨師連盟のブースでいただいたメモ帳。表紙はまだしも各ページの右下にまで「教誨」と緑色で丁寧に印字されているので、自ずとメモすべき内容が限られてくるかもしれない。この「教誨」の存在を意識して誰に見せても困らないTODOを並べるか、あるいはまったく逆に、教誨師どころか友達に見られても恥ずかしくなるような同人誌の感想メモをたくさん書いて「教誨」とのギャップを楽しんでもいいだろう。

刑事施設を会場にした矯正展は、東京拘置所だけではなく全国の刑務所・少年刑務所で開催されている。東京矯正管区(関東地方と東海・甲信越地方の一部)での矯正展は、法務省のウェブサイトでも予告されているとおり、直近では11月や12月に開催されるものもあるので、今からでも一旅行のついでに新たな世界に触れてみてはどうだろうか。

東京食肉市場まつり

東京食肉市場まつりのお知らせ(表面)
東京食肉市場まつりのお知らせ(会場図)
東京食肉市場まつりの開催について

東京都中央卸売市場食肉市場1は、東京都港区港南にある屠場および全国一の規模を誇る食肉市場で、東京都にある11の中央卸売市場のひとつである。他の市場が花卉・野菜・果物の取り扱いがほとんどで、魚介類を取り扱う市場も豊洲・大田・足立の3つある中で、屠畜および食肉を扱うのは芝浦市場ここだけだ。JR品川駅の港南口を出て徒歩3分の好アクセスで、西側には品川インターシティの高層ビルが3つ並ぶ特異な風景が広がっている。東西南北の4つの門の他にはぐるりと塀で囲まれていて、外からは銀色のダクトが這う古びた建物の外壁しか見ることができない。

東京都中央卸売市場の位置および取り扱い内容のマップ
中央卸売市場のご紹介

芝浦市場で2024年10月19日から2日間開催された東京食肉市場まつりは、名前の通り全国から集まったブランド肉や加工肉、革製品、その他名産品の販売や無料試食などの企画で盛りだくさんである。今年の推奨銘柄牛は仙台牛で、仙台牛のしゃぶしゃぶやステーキ重が提供されていた。宮城県の牛がテーマということで、ステージでは仮面ライダーショーや気仙沼市出身のマギー審司氏のマジックショーなども行われていたようだ。東北新幹線の駅で見かけるセミドライのほやおつまみ「ほや酔明」の水月堂物産もブースを出展していた。実は石巻市の会社らしい。ちなみに、昨年は宮崎牛が推奨銘柄で、宮崎の豊かな緑で育まれた乳牛から作ったチーズなどが販売されていた。

実際のところ、芝浦市場の内部を見学する手段はほとんどない。一応、食肉市場の案内資料には見学案内対象者として「小・中・高校生等の団体単位」と記載されていて、この「等」というのが私たちのような大人を含むのかは微妙なところだ。それに、小中学生向けの見学で大動物棟や小動物棟での処理作業まで見せるとはどうしても思えないので、結局は東京食肉市場まつりで見られる市場棟とセンタービルの周辺を案内して終わりそうな気もする。南側でどんな仕事が行われているのかは、おそらくこの先も謎のままだ。

一応補足しておくと、芝浦市場での大動物は牛のことを指していて、小動物は豚のことである。日常で小動物と言われて想像するようなネズミ類やウサギ類、鳥類ではないことに注意したい。なお、鳥類を食肉として処理する施設は屠畜場ではなく「食鳥処理場」に分類されている。つまり、きりん組の頃に連れて行かれたのは食鳥処理場だったわけだ。

芝浦市場のマップ
食肉市場案内資料紹介

芝浦市場のマップに東京食肉市場まつりの会場図を重ねたもの

食肉の取り扱いにはどうしても衛生上気を遣わなければならないことが多いし、食肉処理業務は昔から根強い偏見や差別に晒されているデリケートな領域というのもあって、思想や信条も分からない素性の知れない見学者をゆるく受け入れるのはセキュリティ上の懸念もあるのだと思う。

芝浦市場の歴史や食肉知識の紹介に加えて、このような偏見や差別に対して正しい理解を促す目的で、センタービル内にはお肉の情報館が設置されている。こちらなら、イベントが開催されていない間も平日であれば誰でも自由に見学できるようなので、食肉の知識や芝浦市場を取り巻く環境に興味があれば立ち寄ってみるといいだろう。室内は撮影禁止なのでここで見せることはできないのだが、芝浦市場のジオラマだとか、牛や豚の実物大模型など豪華な展示もたくさんあった。特に、芝浦市場に送りつけられた差別的な手紙やインターネットの書き込みを掲示する横に、芝浦市場を見学した小中学生が書いた差別や偏見に反対する作文を並べて対比する展示には、かなり迫力がある。

そして、これは東京食肉市場まつりの間だけかもしれないが、切り開いた牛や豚の肝臓にびっしり広がる毛細胆管をルーペで観察できるコーナーも用意されていた。肝臓は中心部までしっかり腸管と繋がっていて、腸の細菌が内部まで入り込んでいるのを実感してもらうためのものだ。そうだった。レバーは絶対に(レア)で食べてはいけない!

芝浦市場市場棟と品川インターシティB棟

芝浦市場市場棟の内部

芝浦市場センタービルの1階部分

市場棟とセンタービル1階部分には、ステーキ肉やソーセージ、ベーコン、ジャーキーなどを売る店舗のブースが展開されている。市場棟の内部には近未来を感じさせる銀色の壁が広がっていて、視線を下げるとパック詰めされた肉がどんどん人手に渡っていく様子が見える。まるで、本当に年1回しか肉を買えない世界になったみたいだ。

芝浦市場センタービルから小動物棟を撮影したもの

芝浦市場センタービルを出た広場に置かれていた「芝浦臓器」のバリケード

芝浦市場センタービルにあったポイ捨てを禁止する掲示物

芝浦市場センタービルにあった常識について訴えかける掲示物

人々が肉を買いあさっている姿の間に、普段の芝浦市場の姿を見ることができる。センタービルに隣接する小動物棟は、もちろん東京食肉市場まつりが開催されている今日は働く人の姿はない。暗闇をじっと見つめたところで誰も姿を現さないが、紙に描かれた大きな目が私を見つめ返していた。

芝浦市場にある食堂「一休食堂」

芝浦市場にある薬局「くすりの一生堂」

正門を入って左に進むと、芝浦市場の敷地内で営業する食堂と薬局が姿を現す。こうして一般向けに営業しているのは東京食肉市場まつりの2日間だけで、普段は市場の職員や仲卸業者しか利用できない……というわけではなく、これらの店を利用する分には普段から自由に出入りできるらしい。むしろ、一休食堂の方は通常営業の方がメニューが多いらしいので、ここを目当てに訪れるなら平日に来た方がよいだろう。

お肉の情報館でいただいた「食肉の知識」という本

お肉の情報館で来場者アンケートに答えるともらえる「食肉の知識」は今年も同じ内容だった。主に肉の部位や栄養に関する知識や、食肉の安全を支える仕組みの解説に加えて、巻末には肉料理のレシピがカラーで掲載されている。毎年答えているうちに結局3冊になってしまったが、刷新する予定はあるのだろうか。

食肉市場案内資料紹介の表紙に描かれたキャラクター
食肉市場案内資料紹介

お肉の情報館で配布されている資料に描かれたキャラクター

加工肉のキャラクターが表紙に集まっているのは、食肉を扱う市場の資料ならではのデザインである。加工肉キャラクターの集合写真ならギリギリ近所のスーパーで見かけるかもしれないが、ステーキ・ベーコン・ハンバーグが合体したキャラクターは流石にこれだけだろう(名前もステーキ・B・ハンバーグとかだったら面白い)。

東京食肉市場まつりで配られていたキャラクター名募集の応募用紙

東京食肉市場まつり内で牛と豚のキャラクター名を募集していたので「うらぎゅー」「しばとん」という名前で応募しておいた。これら2匹のキャラクターデザインも2020年あたりに公募で募集していたようだが、公式サイトのお知らせの内容が消えてしまっていてよく分からない。

大賞賞品の高級ブランド牛肉100年分が今から楽しみである。

芝浦市場の駐車場入口にあったダクト3兄弟

東京食肉市場まつりは年1回の開催だが、東京都中央卸売市場では11月にも市場まつりが開かれる予定である。特に、2024年11月3日の豊洲市場まつりは初開催なので、廃墟だった頃の豊洲市場しか見たことがなければ、あれから7年が経った市場の盛り上がりを実感したり、あの頃は見られなかった建物の奥に足を踏み入れるために行ってみるといいだろう。

あとがき

さて、今回は東京拘置所と東京都中央卸売市場食肉市場という、普段はなかなか足を踏み入れる手段のない施設の様子について書き留めた。これらは社会科見学という純粋な好奇心や興味だけで真正面から飛び込むのも難しい場所であり、こうした販売や宣伝のためのイベントの横から滑り込むのが最も簡単である。

もちろん、見学ツアーなどに申し込めば行けるような工場や、多くの見学客を捌くためのコースを整備しているような醸造所を選んだ方が、用意されたガイドをなぞって誰でも楽しめるに違いない。しかし、流動食のようなコンテンツが溢れる現代で、せめて知らない世界に飛び込むときくらいは自分の手で切り拓いていきたいと、私は思う。


  1. 便宜上、以降は芝浦市場という。 

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