同人誌爆売れ最短マップ

有料版: サクラなんて待ちたくない!同人誌をたくさん売りたいあなたが知りたい爆売れ最短マップ

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はじめに

あなたは、同人活動をしていますか?

では、同人誌を発行したことはありますか?

その同人誌を、即売会で頒布したことは?

近年、多くの人が同人誌を発行しています。漫画、イラスト、小説、評論、ルポ、技術解説……それぞれの人生があるように、それぞれの個性溢れる同人誌が巷を賑わせています。それに伴って様々なジャンルの同人誌即売会が開催され、多くの交流が生まれているようですね。

同人誌を発行するのは、もはや珍しいことではなくなりました。最近では、コンビニでも同人誌印刷にフレンドリーなサービスが始まるなど、技術や予算、熱意などの問題によって同人誌の発行に取り掛かれないということは減りつつあります。

同人誌を発行するハードルは、確実に下がっています。しかし、それは同時に大量参入による競争の激化――すなわち、その「次」のハードルの上昇につながっているといえるでしょう。

例えば、数日間にわたって巨大な会場で開かれる即売会では、事前に定めたルートや予算に沿って周回し「お目当て」の同人誌を集めることが恒例行事となっています。さらに効率を上げるために、指示役と購入役を分担する複数人のグループを構成して全員の利益最大化を企図することもあります。これはまさに合戦です。

この「効率的な」戦略の下では、あなたの同人誌が手に取られるまで、そして売れるまでのハードルは非常に高くなったといえるでしょう。

「じゃあ、どんな同人誌を書けば売れるのよ?」

当然の疑問です。

このような問いに対して、たいてい我々は今の流行を教えて解決したことにしようとします。今はこのジャンルが流行っていて、このネタが、今期アニメが……。

そうでなければ、あなたの書きたいものを書けばいいんだよ、という甘い言葉を掛けているのかもしれません。

でも、それって本当に求められてる回答ですか? そうして生まれるのが、売れなかったせいで恨み言を並べるサークルだとしたら?

こんな時は、適切に抽象度を上げていくことで売れる同人誌の方向性を知ることができます。本記事ではその一例として、下のような概念マップを用いて説明を進めようと思います。マップを埋めながら概念や具体例を明かしていく、という構成です。

この記事は、「同人誌が『選ばれる』ようになった市場」の中で、とにかく自分の同人誌を売りたい人にその方針を示すためのものです。つまり、「いっぱい売りたい」「いっぱい『いいね』が欲しい」「いっぱい感想をもらいたい」と考えている人に、最強の同人誌発行計画の一助となるような概念を、図を用いて分かりやすく説明します。

サンプル

なお、本記事は次の人には向いていません: もう同人活動で成功している人。たぶん、あなたが考えるだろう反論は「適切に読まれる」から成り立っています。

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「質」から「量」の時代へ

あなたが洗濯洗剤の詰替えパックを買う時は、家にある洗剤ボトルと適合するものを購入します。まぁ、適当な洗剤をごちゃまぜに使う人もいるでしょうが、それはあまり効率的な行為ではありません。

さて、あなたがいつものように詰替えパックを買いに量販店に行ったところ、お気に入りの洗剤ブランドが廃止されていたことを知りました。とても悲しいことです! これから何日か、慣れない香りに鼻をやられなければならないのですから。

とはいえ、じゃあ明日から洗濯をしないというわけにもいきません。メーカー、香り、洗浄力……総合的に判断して、あなたはしぶしぶ新しい洗剤を購入して帰っていきました。

この状況と似たような選択の視線が、同人誌即売会にも強く向けられています。

かつて、同人活動とは文字通り同好の士のネットワークで密な交流を楽しむいわば「質」の時代でした。しかし、現在あなたが乗り出そうとしている荒海では、同人誌が様々な側面から判定され、事前に定められたルートや予算にどう組み入れられるかを期待して待つ「量」の時代になってきています。

この傾向は、あなたの自己評価にも大きな影響を与えています。たいてい、あなたが自分に(同人活動の)評価を与える場合、おそらく頒布部数、売上額、いいねの数などを見て他人と(または自分と)比較すると思います。ここで注目すべきなのは、これらは全て量的な評価だということです。

でも、実はあなたはこんなことも思っています。「いいねにはもう満足したので、質に寄った濃い感想をもらいたい」と。

売れたい!「量」的目標を達成するには?

あなたがまず考えるのは、「よい作品を書けば売れる」という素朴なアイデアです。

とにかくよい作品を書けば、きっと口コミで広まってみんなに買ってもらえる……。あれ? でも、買わないと読めない作品を誰に宣伝してもらうつもりなのでしょうか? お友達のインフルエンサーに広めてもらいますか? いい考えですね。では、やってみましょう……。

残念ですが、内容がそのまま売上に繋がることはあまりありません。もしもそう錯覚しているのであれば、それはあなたが持つ作者やサークルに対する信頼が厚いということです。いえ、決してそれは悪いことではありません。

でも、今のあなたの売上に直結するのはずばり「分かりやすさ」です。

分かりやすさ

「はぁ? 分かりやすい作品だなんて、児童書作家へのアドバイスのつもり?」

いいえ。作品を分かりやすさでラッピングするのです。分かりやすさのために、単純明快でひねりのない作品を作らねばならないということではありません。複雑で味わい深い作品だからこそ、何段かに分けて分かりやすさを引き出さねばならないのです。

もう少し具体的な説明が必要ですね。

作品の分かりやすさを引き出すためには、豪華なラッピングの演出に取り組む必要があります。

ラッピングというのは、同人誌の内外を包み込む要素です。およそ、以下のような項目で成り立っています。

  • 表紙
  • タイトル
  • 値段
  • 作者、サークル
  • 紹介文、紹介マンガ
  • 評価、口コミ

表紙は、古典的なラッピング要素です。作品の種類によってはないこともありますが、未だに作品の(非常に精度の悪い!)サマリーとして役立っています。長くて分かりにくい内容を一枚の絵で要約することは、少し考えれば意味のないことだと分かるはずですが、なぜか大衆には受け入れられています。ですから、表紙詐欺と指さされることを恐れる必要はなく、とにかくよい表紙に仕上げればよいのです。

タイトルは、近年では作品のサマリーとしての役割をどんどん強めています。旧来のように抽象的なタイトルを使ってもよいですが、あらすじも読めない層のためにより短いあらすじとして使うとよいでしょう。長すぎるタイトルはしばしば揶揄の対象になりがちですが、明らかに分かりやすいのです。使わない理由はありません。

豪華なラッピングと聞いて、お金を掛けて装飾過多な本を作ろうと考えた人はいませんか? でも、値段も重要なラッピング要素です。高すぎれば売れにくいでしょうし、実は、当該ジャンルの相場より安いからといって直ちに売れるということもありません。

紹介文や紹介マンガは、最も具体的なラッピング要素です。内容についてタイトルよりも長く記すことができます。ただし、あなたの作品は分かりにくいので、エッセンスが分かりやすい記号として取り出されて並べられることが多いです。そういう記号化を不快に感じることもあるでしょうが、耐えてください。知らない洗剤のボトルに書かれた難解なポエムに注意を払う人はそう多くありません。

こうしてあなたの引き出した分かりやすさは、洗剤ボトルに添えられた香りや洗浄力の宣伝文句がごとく、ただちに自分自身を比較と選択の視線の下へと晒します。あなたが提示した「分かりやすさ」の総体が、その同人誌が「手に取られるか」を決定します。

ラッピング

これなら、ピンときましたか? つまり、第一目標はよい内容を盛り込むことではないのです。

「よい内容に仕上げなくてもいい、ですって? そんなわけないわ!」

はい。そうですね。そんなわけないんです。大人気作家の〇〇さんは内容もきちんと評価されていますし、あなたもそれを実感しています。

でも、あなたはまだ大人気作家ではありません。あなたがよい内容を作っても、それをそのまま誰かに知らしめるのはとっても難しいんです。だから、どうか、どうか、内容だけをリファインし続けて「いっぱい売れたい、いつかは売れる」だなんて考えないでください。

感想がほしい!「質」的目標を達成するには?

あなたは洗剤の製造業者ではないので、どれだけ自分の同人誌が売れて量的評価を得られたとしても、一方でまだ質的評価が少ないことにうんざりしているはずです。たくさんのPVといいねが集まっていても、具体的な感想がもらえないんじゃ張り合いがありませんよね。

理想的には、購入者全員から十個の観点から百点満点で採点してもらい、十五個の質問にそれぞれ二百文字以上で具体的な評価を書いてもらいたいものです。では、即売会は対面で頒布できるのが利点ですから、渡すたびにそうお願いすればいいでしょうか?

でも、実際はほとんどの人は感想を返してくれません。これは悲しいことです。残念ですが、普通の人はニュートラルな立場で作品について言及する動機がないのです。あなたは同人誌を発行しただけであり、新人賞に応募したわけではありません。

よい作品だからといって常によい評価を得られるとは限りません。場の空気によっては不合理に酷評されたり、炎上することだってあります。

これは非常に難しいことです。あなたはインターネットに詳しいですか? 我々は「どんなによい作品でもケチをつけることができる」という最悪な現実について、インターネットを通してよく知っているはずです。

「私だって〇〇さんと同じようなレベルの同人誌を発行しているのに、どうしてあいつだけ売れてるのよ? ずるいことをしてるに決まってる!」

落ち着いてください。作品そのものの性質が、必ずしも反応に直結するわけではありません。

たいていの人は、何かを評価する場合、無意識のうちに自分を何らかのフレームの中に押し込めています。フレームというのは、評価対象のどの部分にどれくらい反応するかという指標であり、ここにはいわゆる先入観も含まれています。フレームの調整弁が壊れると、不合理で無意味な評価を下してしまいがちです。

我々は、歴史的な名作に対して「でも、作り話じゃん」と切り捨てる人を無視しようとします。それはなぜでしょうか? 我々は高度なコンテキストで「歴史的な名作を読む」フレームを共有しているからです。

炎上のフレームで見られれば炎上しやすくなりますし、酷評のフレームで見られれば酷評されやすくなるでしょう。でも、どうやっても炎上も酷評も起きない作品もあるかもしれませんね。確かに、あなたはそういう作品をたくさん知っています。

では、それらの作品を重箱の隅をつつくフレームで見られたらどうでしょう? 面白いストーリーを見てほしいのに、設定の細かい矛盾だけで盛り上がってしまうかもしれませんね。

匿名掲示板で、自分の描いた絵を貼って評価を求めている人を見たことはありますか? 集まる評価は「スレの流れ」というフレームである程度決まってしまうにも関わらず、書き込む人たちは自らを縛るフレームの存在を否定し、かつ評価の正当性を主張しようとします。これは「ノリ」であり「空気」であり、より強力かつ明示的に示されれば「同調圧力」ということもできるでしょう。

個人がそれぞれで評価をするように働きかければ、ノリや同調圧力は排除できるように見えます。でも、どうやってたくさんの個人に頒布すればいいのでしょう?

もう一度言いますが、あなたは新人賞に応募したわけではないのです。大衆には、全ての作品に気を払う余裕も大義も残っていないのです。作品が選ばれるには豪華なラッピングが必要で、大衆はラッピングを通じて内容とは直接関係のない先入観を受け取っています。

「量」から「質」の時代へ

私はここまでずっと、同人誌を洗剤のボトルにたとえて話を進めてきました。でも、このことに違和感を覚えている人も多いでしょう。同人誌は洗剤のような生活必需品ではないし、必ずしも便利さで選ぶものでもないからです。

あなたの同人誌が、量販店に並んだ有象無象の洗剤ボトルと同じように「平等に」見られている間は、おそらく質的評価の収集は捗りません。質的目標を達成するには、平等に見られる舞台から外れなければなりません。

あなたは作品を通して「人間関係を構築する」ことにより、再び「適切に読まれる」ように強く働きかけることができるようになります。「適切に読まれる」とは、同人誌が「量」として無限に並べられる舞台から脱却して「質」の時代を取り戻す取り組みであり、意図したフレームで作品を見てもらうように働きかけるということです。

人間関係の構築というのは、お友達をいっぱい作ろうということではありません。もちろんそれも含まれますが、タイトルや表紙、紹介文に託した量的な分かりやすさから、作品の傾向から得られるイメージに固められた質的な分かりやすさに移行しようということです。あなたという「作者」は作品の傾向を示す分かりやすい情報だということを意識してください。

自らを特別視させる取り組みを、我々は「ブランディング」と呼んできました。ブランディングはラッピングの一部となります。

そのように作り上げた人間関係の総体が、直接的(あなたから)または間接的(あなたと繋がっている誰かから)に、ラッピングから受け取る分かりやすさを信用できるものとするのです。これはかつて作者だけではなく、出版社、レーベル、書店が担っていた役割でもありました。同人誌の発行を個人の責任で行えるようになったことで、いわゆる「個人の信用が大事になる」時代に入ったと言うこともできます。

ブランディング

つまり、適切に読まれるためには、最終的にはよい作者、よいサークルになる必要があるということです。適切に読まれることで、よい内容をよい内容としてきちんと評価されることにも繋がります。

いえ、単にお行儀よくすればいいというわけではありません。発行する作品が信頼されるような作者になる必要があるということです。作者やサークルというのは、読者がどの作品に時間をかけるかを決めるための分かりやすい情報であり、そのような分かりやすさは売上に直結するのでした。

あなたはまだ、適切に読まれるほどに名を知られていません。豪華なラッピング作りに腐心しながら、気長にやっていくしかないわけですね。

たぶん、ここまで読む中で、あなたはこの法則に当てはまらないような作者や作品を探し出してコメント欄に書く準備をしていることでしょう。「〇〇さんの〇〇は面白いけど、この法則と離れてて……」という反論も、かの作品が適切に読まれるからこそ成り立つ話です。

少し考えてみましょう。あなたがその作者の作品を最初に手に取った理由はなんですか? 好きなレーベルだから? みんなから評価されているから? それとも、昔から評価されているから? もしかして、タレント時代の彼を知っているから? あぁ、単に古本屋で偶然手に取ったからですか?

全て正しい動機だと思います。では、あなたも同じようにファンを作ってみましょう!

……さて、大人気になりましたか? どうにも無理そうでしたら、次の節に進んでください。

ここまでのまとめ

同人誌をたくさん売り、よい感想をもらうためにすべきこと:

  • 「分かりやすい」豪華なラッピングを作る
  • 「適切に読まれる」ネットワークを構築する

分かりやすい同人誌を書くには?

ここまで「分かりやすさ」が大切と述べてきました。やっと、具体的にどんな同人誌が「分かりやすい」かについて触れることができます。ただし、この記事の重要なポイントは前述した概念の部分であり、その実装はごく当たり前のことです。もう読み飛ばしてもかまいません。

あなたがまず「分かりやすい利益」として考えるのは、「知識」や「体験」でしょう。お金を払うことで今後に役立つ知識を深めたり、面倒な準備なく他人の経験を自分のものにできるというのは、いわゆる自己啓発本や自伝、情報商材に通じるところがあります。

そのような「知識」や「体験」を与えられる同人誌のジャンルとしては、次のようなものが考えられます。

  • 評論
  • レビュー
  • 考察
  • 技術

これはかなり大きな枠組みです。もちろん、アニメの深い考察を述べた文章と、コードを交えて軽快に最新技術を解説した文章を同じジャンルというつもりはありません。ただし、あなたはたいていこのような種類の同人誌のラッピングから、すぐに役立つノウハウや興味のある情報を見つけようとするはずです。

大衆の知識欲は活用すべき大きな力です。結局その本を読まなかったり、読んで理解できなかったとしても、彼らはきっと満足するでしょうから。

しかし、あなたがいつでもこのように知識や体験を伝授するジャンルを志向しているとは限りません。知識や体験を盛り込む、すなわち「新しいことを知りたい」という需要を満たしにくいジャンルは多いのです。

そうすると、次に分かりやすい利益として注目しなければならないのは、「共有」された要素でしょう。

大衆は、全く知らないことには興味がありません。しかし、少しでも知っていることには反応し、言及することができます。このような「少しでも知っている」人の大きさを「パイ」とでも呼びましょう。

知識や体験の伝授を主目的としないものが多く、かつ、パイの大きなジャンルとしては以下のようなものがあります。

  • 二次創作
  • アダルトコンテンツ

これらのジャンルが人気である理由は、広く共有されている要素を使って分かりやすいラッピングを簡単に作ることができるという点にあります。

大衆が二次創作を読む際に注意する点は、原作の世界観、ストーリー、キャラクターの性格や外見、キャラクター同士の関係などといった既知の情報がどれほど継承または改変されているかという部分です。改変の仕方によっては、「リスペクト」なるある種の共有意識が足りないと揶揄されることになります。

対象読者層によってはストーリーや世界観を無視されるものもありますが、少なくともキャラクターの外見は原作に近いことを期待されているはずです。

つまり、二次創作は「自分の想定内で物語が構成されている」という保証であり、簡単に信用されうるラッピングとなるのです。この保証の本質はごく簡素なものであり、運用の多くはコミュニティに任されています。

このような「悪い」驚きがないという保証のより形式的な例は、いわゆる「カップリング」に現れています。我々はカップリングを用いて物語の方向性を定め、かつ「A×B」や「AB」というラッピングとして示してきました。カップリングではしばしば非可換であることが強調され、先後が入れ替えられるなどした詐欺的な内容の作品は遅かれ早かれ排除されます。

もう一つの例として、「解釈違い」という言葉があります。解釈というのは、物語やキャラクターから得られる妥当な理解のことでした。いわゆる「解釈違い」を強く自覚する人たちは、自分の経た理解への道筋をあたかも厳密に正しい証明であるように振る舞い、その信念から他者を攻撃することさえあります。

この現実は、同人誌を広く公開したいあなたにとって少し恐ろしく感じるかもしれません。しかし、「解釈違い」を強く自覚する人たちは、すなわち悪い驚きがないという保証を強く求めているとも言い換えることができます。彼らに合った作品を提供することで、安心して適切に読まれるネットワークを構築することができるでしょう。

また、大抵のアダルトコンテンツでは、登場人物の精神的または身体的な要素を書き並べたり、セックスシーンの有無やその詳細を記すことでラッピングとしています。それらはしばしば「タグ」として検索できるようになっており、大衆が求める要素が分かりやすい利益として抽出されていることが分かります。

我々はそういう(カップリングよりも)抽象化した要素を「記号」と呼び、検索やアイデンティティの確立に役立ててきました。

厳密には二次創作とは異なりますが、キャラクターや設定に限らない広い世界観、例えば「中世ヨーロッパ風世界に転生し、たくさんの女性キャラクターに囲まれて冒険を進めていく」というのも、広く「共有」されている観念です。

こうしてみると「〜回泣けます」という売り文句も決してバカにできなくなってきます。大衆が求めている要素を「分かりやすい利益」としてラッピングしているのですから。

ここまでの説明からピンときた方もいるでしょうが、「分かりやすさ」というのは、自分が労力を費やすはずだった「評価」と「選択」を誰かに押し付ける振る舞いに他ならないのです。大衆は簡単に楽しめる「分かりやすい」コンテンツを求めており、そうでないコンテンツはラッピングの部分で「分かりやすさ」の実装を引き受けなければなりません。

なお、ここではイラストの有無について言及していませんでしたが、イラストや漫画は考える余地もなく単に分かりやすい利益です。あれば当然メリットになりますが、前述した要素でも十分に代替することができます。

さて、同人活動を頑張っているあなたは、こうしたラッピングを自分自身で書かねばなりません。人によっては、自分の作品を売れるように(しばしば作品をスポイルしてでも)デコレーションすることに苦痛を感じるでしょう。しかし、作品を読んでもらうには必要なことです。つまり、誰かに見てほしいという思いが勝負を分ける、すなわち「承認欲求が大事になる」時代といえます。

全部

結局のところ、冒頭の「流行を見て方向性を決める」というのがあながち間違いではないことが分かってきます。でも、魚を与えるだけでは解決したことにならないのです。

「二次創作エロ漫画を描けばいいってこと? なら最初からそう言ってよね! 私はオリジナル小説を書きたかったのに……」

魚を与えただけでは、こういった勘違いに正しい答えを与えることはできません。

もっと図全体を見てください。あなたは作品を分かりやすさで包まねばならなかったはずです。「二次創作」「エロ」「漫画」は、消化しやすい利益に直結しますが、必ずしも内容に盛り込む必要はありません。あなたの同人誌がどうやって選ばれるかを、もう一度思い出してください。

そう。あなたの同人誌は、ラッピングで選ばれるのでした。

小説を書きたいのなら、挿絵や表紙、紹介マンガで包み込むことで「絵がないこと」をある程度カバーできます。

どうしてもエッチな絵や話を売りたいのでなければ、キャラクターや設定、ストーリーに記号的属性を付加すればよいでしょう。例えば「共産圏」で「姉妹」が「殺し合う」というのは、非常に限定的で分かりやすい構造です。記号的な分かりやすさは、二次創作と同様に強力なラッピング効果をもたらします。

記号化を行うことで、あなたの作品が魅力として持っていた複雑な相関が失われてしまうことは、また別の話ですが……。

あらら、そこまでしてもまだ売れませんか? ここまで来ると、あなたが豪華なラッピングの価値を無視したことによって起きた悲劇としか言うことができませんね。

さらに進んだ話題

ここまで同人誌の「分かりやすさ」と「適切に読まれる」ことの大切さについて説明しましたが、まだいくつか話題が残っています。それらについて軽く触れた上で、この記事の終わりとしましょう。

体験版の増加

インターネットの普及で、あなたは同人誌を発行しなくても作品を見てもらえるようになりました。

SNSにイラストを一枚ずつ投稿したり、自分の意見を数枚のマンガにまとめて投稿すると、ラッピングを飛ばして先に内容を見てもらうことができるようになります。旧来は、作品から実際の内容を切り出したものを「体験版」と呼んで配布していたわけですが、その比率が体験版と呼ぶにふさわしくないほどに大きくなってきたということです。

この世界観で強力に作用するのは人間関係(フォロー、フォロワー関係)の構築であり、ラッピングは簡素になりがちです。一枚のイラストや数枚のマンガ、短い動画はそれ自身がラッピングとなりうる手軽さを備えているのです。

そういう「手軽な」作品を発表することが一般的となった世界でも、やはりフレームからは逃れられませんが、ラッピングの概念はかなり変わってきます。

このような場合でも、タイトルやキャプションを「分かりやすく」することで、作品を見てもらえる確率を増やすことはできるでしょう。ただ、これらの(内容とは直接関係なかったはずの)ラッピングに実際の内容が含まれてしまうため、この記事の概念でカバーできる範囲を大きく超えています。

ジャンルの選択

この記事では、ラッピングを豪華にすることで自らを競争に晒すことが必要という話を繰り広げてきました。

でも、そういうことを望まない人もいるでしょう。ただの趣味だから、人と交流するのが苦手だから、自信がないから……様々な事情があるはずです。同人活動はいろいろな人に開かれた自由な活動ですから、穏やかに生きることを第一目標としてもいいのです。

同人誌を「とにかく」たくさん売りたいわけではないあなたにとっては、少しマッチョな記事だったかもしれませんね。すみません。

ただし、同人誌をたくさん売るにはどうしても大きな市場が必要です。競争を避けたいのなら、目標を下げてどのジャンルで同人誌を発行するかを見直してみるとよいでしょう。この記事はそもそも「同人誌が『選ばれる』ようになった市場」での話ですから、その傾向が弱いジャンルではいくらでも(その市場の規模を限度に)活躍できる可能性が残っています。

どうしても「たくさんの同人誌から選ばれたい」あなたにとっては、少し受け入れがたい提案かもしれませんが……。

おわりに

あなたは、「ラッピング」で「分かりやすさ」を主張して、快を得ればよいということが分かりました。

まとめ

この図の細かい部分に注意を払わないでください。図中の具体的例は時代によって、ジャンルによって大きく変わります。

あなたに必要なのは、より大きな概念の把握と、それを実装に落とし込む力なのです。

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