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分籍旅行のこと

先月の初めごろ、これまで父母と姉妹(私は四人姉妹の次女なのです)と共に入っていた戸籍を抜けて新たな戸籍を作りました。いわゆる分籍というものです。

新たな本籍地には富山県下新川郡朝日町を選びました。ここには、山から川を通って流れ落ちてくるヒスイを採集できるヒスイ海岸という場所があるのです(新潟県側にも同様の海岸が広がっています)。人生がゴールしたらみんなでヒスイを拾い集めるのを仕事にして、あとは好きなことだけしていたいね、といつも思っているのでここを本籍にします。最近流行っている100兆個のパラメータの海を漁ってミケランジェロ像を作っていると、早く人生をゴールしたくなりますね。

今回は役所への届け出のついでに、ヒスイ海岸やその周辺を回る 分籍旅行 を楽しみました。穏やかな春先の平日に海岸をゆっくり歩いて回るのは、忙しい日常の疲れがすっかり吹き飛ぶ素敵な時間でした。分籍は移動先の本籍地に届け出る必要があると勘違いしていた(実は居住地の役所でもよかったらしいです)ゆえの小旅行だったのですが、全部が終わった後のような優しい楽しさを味わえたのでよしとします。

ヒスイ海岸の夕暮れ

ちなみに今回分籍を行ったのは、私が知らないうちに実家の引っ越しと本籍の移動があった(転籍)ことへの対応のためです。慣れ親しんだ実家が突然消滅するという状況にはそこそこ驚きましたが、私は両親と同居していないのでほとんど実害はありません。しかし、今後かれらの現住所の移動に合わせて私の本籍まで動くといろいろ不便がありそうなので、先手を打っておくことにしました。

向こうにもいろいろな事情やプライドがあり、結果として不幸なすれ違いが起きていたようなのですが、ここで書くには退屈で個人的すぎるので委細は省略します。気が向いたらFANBOXに雑文として置いておこうと思います。


戸籍」というのは、国民一人一人の身分事項やその変動を登録し、公証するための制度です。ここでいう身分事項とは、出生に関する事項(父母の名前や出生日)に始まり、その後の婚姻・離婚・縁組・離縁・認知などの身分行為の結果、そして死亡に関する事項(死亡日)を指しています。

戦後日本の戸籍は、筆頭者および配偶者と未婚の子をまとめた家族単位で構成されるもの(イエ制度だ!)で、主に出生・婚姻・縁組・認知などで同じ戸籍にまとめられ、死亡・離婚・離縁または未婚の子が婚姻すると戸籍から削除されます。戸籍の変動はこのような身分行為に付随する場合が多いですが、例外として「分籍」を行うと、単に今の戸籍から抜けて新たな戸籍を作ることができます。

戸籍は身分事項を公証するためのものなので、必ずしも現在の住所地とは対応していません。戸籍を置く場所を「本籍」と呼び、日本国内の住所であればどこでも設定できます。必要なら「転籍」を行って、戸籍単位で本籍を移動することも可能です。ただし、その住所を管轄する自治体(本籍地)が存在・確定している必要があり、戸籍はその自治体で管理されます。

さて、ここで分籍の手続きについてある程度まとめます。分籍を行うには、「誰が」「どこで」「どうやって」進めるべきか知っておく必要があるでしょう。

①誰が: 分籍できるのは筆頭者や配偶者以外の成人だけです。筆頭者や配偶者が戸籍を分割したり、未成年の子が単独で新たな戸籍を作ることはできません。私は未婚で成人で実家なしです。

②どこで: 現在の本籍地または新しい本籍地に加えて、現住所地または一時的な居所地の自治体の市町村役場や区役所のいずれか1つに提出します。私は現住所地で手続きできることを知らなかったので、旅行がてら新しい本籍地で届け出を行いました。

③どうやって: 現在の本籍地以外で手続きを行う場合は、戸籍の内容を公証する戸籍謄本(全部事項証明書)が1通必要です。私は郵送で請求したものを新しい本籍地に持参しました。

戸籍謄本は1通あたり450円となかなか高く、郵送で請求する場合は必要額の定額小為替証書を同封する必要があるのでなかなか不便です。定額小為替は1枚200円の手数料がかかる上に、ゆうちょ銀行(貯金窓口)での取り扱いなので、土日や深夜早朝に利用可能なゆうゆう窓口などで発行することはできません。もちろん往復の切手代も必要なので、結果として戸籍謄本1通のために800円以上かかってしまいました。

450円の定額小為替証書

なお、記入・捺印済みの分籍届と認印の持参を指示する自治体もあるようなので、必要に応じて届け出先の情報を確認してください。私の場合は窓口で分籍届を書き、署名のみで押印は求められませんでした。

重要な注意事項として、分籍を行うと元の戸籍には戻れなくなります。離婚や離縁では元いた戸籍に戻る「復籍」を選べますが、分籍では自分が筆頭者の新しい戸籍が作られるので移動できなくなるのです。離婚後に新しい戸籍を作った場合も同様で、後から復籍することはできません。私も窓口でその旨を告知されて承諾したところ、長い溜めの後に目の前で戸籍謄本が破り捨てられてしまったので、もう戻れないところまで来たのを実感しました。


戸籍というのは非常に面倒なものです。まず現住所を示す住民票とは別の概念として存在する点が分かりにくく、さらに家族単位での管理ゆえに移動や出入りが煩雑になっています。出生や婚姻といった単純な追加操作だけならまだしも、子の婚姻による除籍だとか、離婚による復籍、死亡による除籍などを考えていくと崩壊していくのが分かるでしょう。

これらの身分行為は、戸籍に対応する家族とは異なる範囲に影響するものであり、この結果を戸籍に記録するのは不自然です。つまり、個人に関わる身分事項の公証は個人に紐付くよう記録すればよいのです。婚姻や出生の記録が必要なら、別のレイヤーで個別にリンクすれば十分でしょう。婚姻ならお互いに署名したパートナーシップの記録を保管し、出生は子に適切な署名を与えればその事実を証明できます。マイナンバーは今どこで何をしていますか?

戸籍の廃止論が出てくると、実利上のメリットとして、家族関係や生まれてから死ぬまでの身分事項を把握しやすいという点を挙げる人がいます。しかし、それが実際に活きるのはおおよそ相続人の証明の際だけです。たまに家系図を作りたくなってしまう変わり者が出てくることもありますが、いずれにせよ人生でそう何度も経験するものではなく、身分行為に関する手続きを煩雑にするデメリットを超える利益をもたらす制度ではありません。

他にも、長い間続く日本の歴史を残すべきとか、家族の一体感がなくなってしまうという愛にあふれる主張もよく見かけますね。でも、普通の人は生活の中で戸籍謄本を意識することはないし、戸籍謄本に家族の名前が並んでいるだけで一体感が高まるような人は、戸籍がなくとも家族を愛せるはずです。そして、私が家族を愛して実家の消滅を見届けられる人格者なら、こんな記事を書くこともなかったのです。

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